【開催報告】放射光(SPring-8)と中性子(MLF)の両実験施設での測定実習による
「第6回 放射光・中性子の連携利用に向けた合同研修会 小角散乱測定研修会」
高輝度光科学研究センター(JASRI)とCROSSは、SPring-8とMLFの横断的な利用促進の一環として、「放射光・中性子の連携利用に向けた合同研修会」を開催しています。本研修会では「小角散乱測定」をテーマに取り上げ、両施設で研修を行いました。
本研修会の特徴として、参加者各自が興味を持つ試料を両施設に持ち込み、小角散乱測定実習を行えることが挙げられます。研修会は今回で3回目となりますが、毎回多くの参加希望があり好評を博しております。過去には、研修会の参加をきっかけに小角散乱測定の実験を行い、その結果を査読付き論文として発表された方もおります。
2022年10月11日(火)には、SPring-8で、前MLFディビジョン長の金谷利治京都大学名誉教授による小角散乱の座学とBL19B2ラインのX線小角散乱(SAXS)装置を用いた実習が行われ、2023年2月2日(木)には、MLFで中性子小角散乱(SANS)の実習が行われました。参加者は、4グループ6名でした。
MLFでの研修会では、午前にMLFの中性子小角・広角散乱装置「TAIKAN」の装置責任者である高田氏(原子力機構J-PARCセンター)により、MLFおよびTAIKANの説明とSANSの特徴を活かした研究事例の講義が行われました。
午後からは、2つのグループに分かれて実習を行いました。TAIKANでは0.1ナノメートルから数十ナノメートルの構造を同時に捉えることができます。実際にナノスケールの周期構造と原子レベルの構造を同時に測定できることを体感してもらいました。放射光では、金属などを測定する場合、透過率を十分に確保するために試料厚みを数十マイクロメートルにする必要があります。一方、中性子は物質透過性に優れているため、1ミリメートルの厚みでも十分に測定できました。さらに、ソフトマター材料の測定では、中性子に対する重水素と軽水素の散乱能(散乱長)の違いを活用したコントラスト変調測定が行われるなど、中性子の特徴を実感してもらいました。また、実習以外の時間には、MLFの施設見学が行われました。
* 講 義 *

* 1班 実習 *
* 2班 実習 *
実習には、SPring-8で座学を行なって頂いた金谷名誉教授とJASRIのスタッフにも参加頂き、測定データの解析や解釈の仕方、引張試験機や調湿装置などの試料環境機器を使用したSANS測定についても一緒に議論を行って頂きました。研修会終了後も、測定結果の解釈について議論を継続している参加者もおります。
今回の研修会をきっかけに、参加者が新たな中性子利用者、中性子・放射光連携利用者となってもらえることを期待します。
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